2004年、浦和が初めてステージ優勝したときに、サポーターのみなさんに話を伺って本を作ったことがあります。

そのとき、一番強面だと思ったあるサポーターがこう言っていました。
「他のチームのヤツはみんな嫌い。だけど赤いユニフォームに袖を通して浦和のために頑張ってくれるのなら、人種とか関係なく好きになる」
でも、確かに他のあるサポーターは「俺は朝鮮人が嫌い」と言っていました。「なぜなら昔、朝鮮高校の奴らとケンカしたから」。それでも「 浦和にそんな選手が来たら複雑だけど、応援するとは思う」という話も聞きました。

10年前ですらそこまでのクラブ至上主義で、他はすべて二の次という考えを聞いていたものですから、僕は当初「JAPANESE ONLY」が鳥栖に向けられたメッセージかと思っていました。鳥栖は尹晶煥監督や金民友選手、呂成海選手、キム・ミンヒョク選手、崔誠根選手など韓国の人たちが活躍しています。それに対して浦和は全員日本人選手ですから、もしかしたら日韓対決と思わせようとしているのかと。

ところがその後、いろいろな話を聞いていると、もしかしたら李忠成選手に差別意識が向けられているのではないかということで驚きを禁じ得ません。だって、李選手は日本人。これまで日本代表としていろいろな試合で戦い、しかも日本のために素晴らしいゴールを決めてきてくれた選手。アジアカップ決勝での優勝を決めた素晴らしいボレーは今もまだしっかり目に焼き付いています。李選手に向けられたものとしたら本当に不可解です。

昔、これまた別の浦和のサポーターに「世界に出て行くことを考えて、横断幕では英語でのメッセージもある」と聞いたことがあるので、まさかゲートをくぐったら「日本語のみ」ということでもないでしょう。 「JAPANESE ONLY」が李選手に向けられたものだったとしても、鳥栖に対するものだったとしても、あるいは誰かを対象としていないものだったとしても、差別的意図があったとして処分は免れないのではないかと思います。

何より、「JAPANESE ONLY」などという、どうにでも取れそうな表現を使っていたことにもがっかりです。後ろ足に重心がかかっていながら選手には「前に出ろ」とは言えないはずですから。