本日、「みんなのごはん」でまた一本記事を公開していただきました。移り変わりの激しいインターネットの中で、もう3年もこうやって連載を続けさせていただいているのは、読んでくださるみなさまと、企画を守り抜いてくださる中の人のおかげです。本当にありがとうございます。

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最後は心が折れてしまった……太田吉彰を劇的に変えたヨーロッパ挑戦と震災の記憶

 海外での移籍交渉ってどうやってるのか、赤裸々に語っていただきました。仕事をしていない時期、仕事のない時期ってどれくらい苦しいか、ちょっとだけわかる気がします。

ところで2007年、太田選手がイビチャ・オシム監督に選ばれてアジアカップに行ったとき、頼み事をされたと憶えています。日々、黙々と練習を続けるものの出番が来ない太田選手に、メンタル・コンディションを心配して話しかけたところ、急に「髪を切るハサミを買ってきてほしい」とお願いされました。

なんでも髪が伸びたので自分で切りたくなったのだとか。ところが、そんなカミソリをベトナム・ハノイで探してもなかなか見つかりません。床屋さんに行って教えてもらおうと思ったのですが、使っているハサミがさびているのを見て止めました。

ちなみに、帰国して美容師さんに聞いたところ、使っているハサミは10万円以上するそうです。 国内でもどこで買ったらいいかわからないし、そんな高額なハサミ、そうしう簡単には買えません。数日探し回って見つけられなかったことを告げたとき、太田選手は「あ、そうですか」と淡々と一言。あっさりヘアカットを諦めたみたいでした。

ハノイ観光はしなかったのですが、ハサミを探してひたすらハノイの街を歩きました。生涯でただ一度、「ハサミ、ありますか?」と聞いて回った記憶です。もしかしたら僕に思い出を作ってあげようと太田選手は考えてくれたのか……ってことは絶対ないだろうなぁ。でも、そのおかげで太田選手との縁が続いている気がします。