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2019年6月、「みんなのごはん」が更新停止になった
サッカー記事の担当編集者だった両角浩太郎は

ところが80本以上あった記事の内容に触れたのはごくわずか
何故か大好きなプロレスについて滔々と語ったりもした
今思えば連載を総括する内容ではなくてよかったのかもしれない

なぜなら「みんなのごはん」は今、奇跡的に復活したからだ
読者の方の後押しでサッカー記事も掲載されることになった
そして両角も再びサッカー記事の編集を担当することになった

更新停止中に何を学んだか
読者の方々の期待にどう答えるのか
新たな厳しいチャレンジが始まる


「ヒマで元気な無職」になった現在

僕は「みんなのごはん」の更新が停止した後、「ぐるなび」を辞めました。

その後って、労働という意味ではほとんど仕事をしてないんですよ。辞めるときって労働に疲れて、アイデアを出すための脳の貯金を使い果たしてしまった気がしていました。しばらく自由に生きて頭のキレを戻さねばと思いながら、はや9か月が経ちますね(笑)。おかげさまで元気です。

それでもお金は必要なので、ネットのお小遣い稼ぎをちょっと拡大したようなことをやって日銭を稼ぐことはあります。アフィリエイトみたいなものです。あとはeBayで輸出業の真似事みたいなこともしています。会社員の仕事に比べると、楽勝すぎてこんなんでいいのかなと思ったりもします。

一応、何回か労働をしたこともあります。警備の仕事ですね。あ、自宅警備じゃないですよ。知り合いの格闘家の方たちが警備の仕事をしてるんですけど、彼らがシフトを抜けなきゃいけない時に、代打という感じで勤めました。

格闘関係の人と繋がりを持ちたかった部分もあって、名前は明かせないんですけど私が昔から存在を知っていた有名プロレスラーの方に直接電話で誘われて、「これは断るわけにはいかない」って。レスラーの方にとってみれば「ちょうど暇そうなヤツがいる」という感じだったんでしょうね。

そういうちょっとした仕事って、フルタイムの仕事をしている人には頼みづらいんだと思います。だから「ヒマで元気な無職」って社会の潤滑油というか、意外に需要があるんだなと思いました。

今後については、気分によって変わってくるんですけど、とりあえず自営業に近いスタイルのほうがまだいろんな可能性があるのかなって今は思ってます。


愛媛の一矢報いた得点が記事の原点だった

更新停止前の「みんなのごはん」を振り返ると、「あれをやっておけばよかった」というのはそんなにないんですけど、全般的にもうちょっとメッセージ性の強い記事を増やしておけばよかったという気はしました。

グルメ媒体だと、安さとか風変わりな部分とかを強調するとバズったりするんですけど、そういうのだけではなくて、もう少し違った表現の方法があったんじゃないかなという思うときはありました。そうこうしてたら復活する方向で動きたいという話を中の人からもらって、しばらく経ってからうまくいったら手伝ってという話をされた気がします。一般論として、復活するからにはずっと続いてほしいと思いましたね。

一度サイトを離れてたんですけど、もう一度同じ媒体で仕事をするというのに不安は無かったですね。辞めてからしばらくインターネットを違う角度から見ていましたから、1年前の自分と比べるとアップデートされた部分もあります。1年で磨いた部分をもうちょっと広いフィールドで見せたいという気になったのは確かです。それは前の気持ちとはちょっと違います。

前はもともとインターネットの中でコミュニティを作りたいという気持ちだったんです。コミュニティと言うと漠然とした感じなんですけど、サッカーファンの行動ってグルメサイトと結びつきやすい部分があるのかなとも思ってて。試合を見た後、飲みに行ったりしますし、ファン同士が集まるとご飯食べようという話になりやすいですからね。そうやって飲食店にサッカーファンが集まったとき、話のネタになるようなものというのを作りたいと思ってたんです。すごく間接的ですけど。

その話のネタとは何かというと、インターネットユーザーがネットに期待するものって、一言で言うと「裏情報」じゃないかと思うんです。裏情報と言っちゃうとゴシップというイメージがあるので、適切な言い方かはわかりませんが。マスに向けた薄いものではなく、「自分たちのための情報」と言えばいいのかな。

マスメディアが伝えきれてない部分で大きなサッカーメディアが取りこぼしているようなところで、なおかつ読んだサッカーファンが語り合うことで結び付きを強められるような、話のタネになるようなもの……ですかね。

実は前回の連載を始めるときに直接的ではないものの、ヒントと言うか、きっかけになった試合があったんですよ。2011年天皇杯4回戦の試合で、愛媛vs浦和というのがあって、愛媛には元浦和の三上卓哉という選手がいたんです。しかも三上はその天皇杯を最後に引退すると表明してました。

試合は後半アディショナルタイムまでに浦和が3点取ってリードしてました。でも最後の最後に、左サイドから三上がクロスを上げて福田健二が押し込んで愛媛が一矢報いるんです。

三上はそのアディショナルタイムに途中出場しました。すると愛媛の中盤の選手は不自然なくらい三上がいる左サイドにボールを出そうとするんです。そしてゴールの後、リプレイを見てみると三上とマッチアップしてた浦和の山田暢久が、三上がクロスをあげるときにあまり激しく行ってないんです。

三上の出場は監督の配慮だったかもしれないし、左サイドにボールを回したのはチームメイトが気を使ったからかもしれないし、山田も分かっていたから当たりに行かなかったんじゃないかなって。それがすごくドラマっぽいものに見えて。

記録から見ると何でもない試合なんですけど、そうやってピッチの上の気持ちが垣間見えた気になっちゃうと、すごくドラマが詰まっている感じがして。優勝が懸かっているような試合じゃないからサッカーメディアにも数行の記事が出るだけなんですけど、そこを深掘りできないかなって思ってました。

それから、コミュニティを作りたいと思ったもっと深い部分の理由を言うと、雲をつかむような話になっちゃうんですけど、僕は今の世の中に危惧している部分があるからなんです。たとえば「政府を信頼できますか?」と言われた時に、否定的な答えの人が結構いると思うんですよ。そんな時代に、「丸腰」でいると危ないんじゃないかと思ってるんですね。「丸腰」というのは仲間を作らずに生きていくということで。

ネット上のコミュニティって政治議論でレスバトルみたいな分断する方向に行きがちです。世界的にそうなってますよね。だからマクロで言えばこの傾向は続くんでしょうけど、グルメやサッカーはリアルの行動に繋がりやすいぶん、人間同士が繋がる方向に行ける可能性もあるなあと思っていたんです。

そもそも支持政党が違う程度のことで分断してしまうのは、ネット以前の人間界では異常な現象ですからね。
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発言を萎縮させている社会情勢

サッカーの連載を再開するにあたって、新しいことに挑戦したいと思ってるんです。前の連載はコアなサッカーファンが知りたい深い話を聞いてもらってたという感じだったんですけど、今回はもうちょっと対象を広げて、サッカーファンじゃなくても読めるような部分を出していきたいと思ってます。

いいコンテンツというのは多かれ少なかれ読者に衝撃を与えるものだと思ってます。その衝撃を体験すると、以前の自分には戻れなくなってしまうので、受け取る側にも覚悟が必要です。

僕も「Jリーグ誕生」と「ドーハの悲劇」があった「1993年の衝撃」で後戻りできなくなりました。それを体験したことが良かったのか、悪かったのかはずっと後にならないとわからない。

そして衝撃を与えるには人間の深い部分に触れないといけないと思ってて。多分、このインタビュー企画は話す人と聞く人の気持ちがシンクロしている部分があったと思うんです。そういうところをネットユーザーの方々に支持してもらってたんじゃないかなと。

人間の強さとともに弱さにスポットを当ててきたと言うか。そしてそこに対して今まではサッカーをテーマにアプローチしていたんですけど、今後は人間はどう生きるべきかというアプローチで聞いてもらうという感じだと思っています。

前回の連載が始まった時ってこんなに長期連載になるとは思ってなかったですね(笑)。でもこうやってやってみると、人間の深い部分に迫る連載になれたのかもしれないと思います。

ただ、今インターネットが発達してSNSが盛んになってきた中で、日本ではいろんな人たちが発言することに対して萎縮してるように感じます。大半の人が言葉を「置きにいく」と言うか、当たり障りのないコメントをしてやり過ごしているように見えてて。

でも本当はサッカー選手というものは、特に代表チームに行くような選手というのは何万人の前でプレーするわけですから、一般の人と比べて特別なものを心に秘めていると思ってるんですよ。そうでなければあの大観衆の前で自分を出せないですから。

その特殊な常人離れした部分をもっと引き出してあげたいと思っちゃうんですよね。海外のサッカー人ってもっと発言が自由で、ジョゼ・モウリーニョ監督とかやばいじゃないですか。知性派と言われる人、たとえばジョゼップ・グアルディオラ監督にしても発言のメッセージ性が強いです。

本当は日本人の選手ももっと言いたいことがあるんでしょうけどね。日本の社会風土が発言を萎縮させているのかなと思ったりしてるんですけど。そういうのを打ち破っていきたいという気持ちはありますね。


韓国料理屋で味以外によかったもう1つのこと

最近のおすすめのレストランですか。きましたね、この話題(笑)。

最近行ってここはいいと思ったレストランは、横浜の伊勢佐木町にある「そうる肉食堂 承」というところで、ランチがすっごく美味しくて。牛カルビ定食を食べたんですけど、ランチであれだけ美味しかったから夜も期待できるなって。

ここは自分で焼くんじゃなくて焼いたカルビが盛られてくるんですけど、自分で焼くタイプは僕には火加減が難しいので、こうやって焼いてくれるのはいいなって。韓国系のお店って肉とかタレがひと味違ったりして、それもいいんですよ。後は付け合せも沢山出てきますし。近所でそういうお店がないかと思って探したくらい韓国料理を堪能できました。

あとは韓国料理屋さんってたぶん家族経営で、なんか人間関係みたいなのも垣間見えて、それもよかったですね。厨房の中に年配の人がいて、料理を運ぶのが若い人で。お店の方の会話が家族っぽい、なんとも言えないゆるい感じで、それがまた良かったんですよ。ぜひ探してみてください。



■両角浩太郎 プロフィール
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「選ばれし者の恍惚と不安、二つ我にあり」「精神的なこと、これも技術のうち」「ショア!」が座右の銘の編集者。好きなサッカー選手は小野伸二。ムエタイではレックハーイ松本を師事する。アントジム所属。

1977年生まれ 東京都出身